メッセージ

まだ小学校に入る前の頃,中東戦争の影響で日本に石油が入ってこないオイルショックという出来事がありました。当時,発電エネルギーの石油依存度は高く,父の運転するクルマで走る高速道路は街路灯が消え真っ暗でした。その理由を父に尋ね,日本だけの力で電気を作ることができないことを知り,その暗さに象徴された恐ろしさを感じました。そしてそれを思い出したのが2011年の東日本大震災に伴う計画停電でした。高架の電車から真っ暗な街を眺め,40年前の不安がよみがえりました。

子供のころから鉄道が好きだった私は,小学校6年のときにデビューしたサイリスタチョッパ電車(国鉄201系)にとても興味を惹かれました。スイッチのON/OFFで電車の速度が変わると鉄道趣味誌は簡単な回路とともに記載がありました。しかしサイリスタの周りにいろいろな素子がついていてその役割はわかりません。また回生ブレーキで省エネルギーとありますが,これも原理がよくわかりません。でもどうしてもそれらを知りたくて仕方がありませんでした。

今,私達の研究室ではこれから確実に減っていく化石燃料をできるだけ節約し,持続可能な社会,すなわち幼稚園生の子供が真っ暗で不安にならない社会を作ることに少しでも貢献したいと思っています。

また,今,パワーエレクトロニクスの講義を担当し,サイリスタの反発パルス消弧回路の説明ができるようになり,回生ブレーキ力の限界も説明もできるようになりました。「知りたい」という欲求が満たされることは本当に幸せなことです。

モチベーションは何でも良いと思います。もしかしたら切っ掛けも何でもよいのかもしれません。自分が少しでも何かに貢献したい,こういうことを知りたい,あるいは何かをやってみたい。そんな気持ちを満たし,世の中で活躍できる力を身に付けてもらえる研究室を目指しています。